「SAKURA 〜 雪月華 〜」

SAKURA ? 雪月華 ?  (ファミ通文庫)

SAKURA ? 雪月華 ? (ファミ通文庫)

転生恋愛物は結構好きなので前から興味はあったのですが、反面でゲームとしての出来栄えは微妙という評も多く、手を出しかねていた本作。結局間を取ってノベライズ版に手を出してみました。ゲームよりは安く手軽にエッセンスを得られるということで。


まず一読して思うことは「久遠の絆に多大な影響を受けているんだろうな」ということでした。主人公達は演劇部の部員で、平安編、鎌倉編、大正編を演じていくことによって、過去の記憶を取り戻していく、という流れですが、多少時代は違えど構造的にはかなり似てますからね。もっとも、久遠ではなかった近代の大正編が入っているのは楽しいところです。話的にも大正編は良い出来のような気がする。「演劇」という形式を取ることで、「昔の話なのに登場人物が現代的過ぎる」という問題をクリアしていることも評価点でした。


ただ、小説としてみるといかんせんこの手のノベライズの限界と欠点が強く出てしまっている感はありました。ゲーム原作物だとただでさえ多いキャラクターを一冊に押し込めるのが難しい上、今作では各時代の話まで入れるのですから、必然的に描写は浅く性急にならざるを得ません。話の流れを追うのに精一杯で、キャラクターの魅力を浮かび上がらせるほどの余裕がなかったというところでしょうか。ラストもあっさりしすぎで盛り上がりにかけます。


もっともゲーム版だったら良かったかと考えると、どうも基本設定の時点でやや主人公とヒロインの結びつきが弱いかなという気がするんですよね。また比較になってしまいますが、久遠の場合だとこれでもかというほどの設定でヒロインとの絆を深めてましたから、1000年以上転生して愛し合うというのも納得させられたものですが。