近頃の言葉

新年から、これも世相かなと考えさせられた発言が2つあったので、ちょっと触れてみました。


その1 若い君への年賀状


藤原正彦先生の書かれたコラム。十分話題になったのでいまさら僕が付け加えることも無いでしょうが、それでもコメントせずにはいられません。ポイントは色々ありますが、特に「昔はいじめがなかった」くだりについては、読んだ誰もが突っ込みたくなったのではないでしょうか。人間というのは基本的に過去を美化する性質を持っているようですが、それにしてもこれほどベタな例が出て来るとは驚きでした。一体、先生は自分の言っていることを本当に信じておられるのでしょうか。だとしたら、「国家の品格」前書きに書かれていた奥様の言葉(「話の半分は誤りと勘違い,残りの半分は誇張と大風呂敷」)はやっぱり正しかったと思わざるをえません。


そもそも、新成人に向けて「昔は良かった、君達の時代は駄目だ」とやるのだからひどい話ではあります。なんだかなあ。



その2 人材派遣ザ・アールの奥谷禮子社長、「過労死は自己管理の問題」と労働者批判 労基署は不要とも

以前から自己責任論者であるのは存じておりましたが、ここまで強硬な主張とは驚き、困惑しました。日本社会のこれまでの労働感を一変させるような考え方だなと。発言内容自体は一貫性があり、一つの世界観なのでしょうが、資本主義初期から大勢の血と汗で確立されてきた労働法制の歴史をどうとらえているのかという点は気になります。


多分奥谷さんは自分の能力と成功に自負心が強いんだろうなと思います。でも、自分ができるからといって、必ずしも他の人が出来るものではないわけで。理想を全員に求めすぎのような感を受けましたね。「過労死は自己管理不足」と言っても、現にその「自己管理」が出来ない状況の人がたくさんいるからこそ問題になっているわけです。そもそもボクシングの選手だってドクターストップ、レフェリーストップがあると思うんですが、どうなんでしょう。


どう考えても反発が大きくなりそうな意見をここまで堂々と開陳するその勇気は大したものだと思うのですが、少なくとも政府委員としてはどうかと思いました。彼女が突出してしまうのはむしろ経営者側にとってもマイナスのような気がするのですが。