「経済政策を歴史に学ぶ」

経済政策を歴史に学ぶ [ソフトバンク新書]

経済政策を歴史に学ぶ [ソフトバンク新書]

最近はソフトバンク社も文庫を出すようになったのですねえ。タイトルは地味目ながらも、昭和時代の恐慌の歴史から現在の日本経済に対する分析を小気味よく語った一冊でした。


バブル崩壊からこっち、やれ「財政出動だ」「構造改革だ」「金融緩和だ」とワサワサ話が出てきましたが、それらはすでに皆、何十年も前に行われた議論の繰り返しに過ぎないというのは新鮮な視点でしたね。こういうのはつい「現代の理論の方が優れてる」と思いがちですが、根本的なところで人間の考え方や経済対策なんてそうは変わらないということですか。


著者の田中さんは現在の景気回復に「小泉構造改革」は役に立っておらず、日銀の量的緩和や外需要因の効果が大きいと書いています。そのため、ゼロ金利解除は早計であると批判していますが、さてどうなりますか。先日読んだ「エコノミストは信用できるか」の著者は批判的だったクルーグマン教授発の「インフレターゲット」論を「期待の経済学」として肯定しています。やっぱり人によって言うことが全然違うのがエコノミスト、ということでしょうかね。僕としては、インフレ目標は割と面白そうな施策だと思いますし、デフレ基調から抜け出せない現状を考えると、試みても面白いかなと感じます。


本論からはちょっとそれた部分ですが、印象に残った一文。

格差社会」の大きな象徴ともなっているニートであるが、その実像はきわめてあやしげな概念操作の産物といっていいだろう。

同感です。言葉ばかりが独り歩きしてしまってる感がありますね。