「「反日」とは何か―中国人活動家は語る」

「反日」とは何か―中国人活動家は語る (中公新書ラクレ)

「反日」とは何か―中国人活動家は語る (中公新書ラクレ)

久しぶりに面白い新書を読んだなという印象でした。副題にあるように、著者が実際に中国の「反日」活動家にインタビューし、その実相に迫った一冊です。意外だったのは、多くの活動家がしごく冷静で真っ当なコメントをしていること。たとえば愛国者同盟の馮錦華氏は、デモでの暴力や全日本人をやみくもに否定する行為には断固反対しているそうで、あくまで「反日」ではなく、日本政府や右翼の一部にのみ反対しているのだ、と言います。写真を見てもなかなか理知的っぽい。少なくとも、感情的に暴発しているというような悪い印象は全然受けませんでした(でも、靖国神社狛犬に「死ね」と落書きしたのはいただけないなあ)。


また、中国政府側がデモを影で支援しているような話はまったく無いこと、それどころか、サイトが常に閉鎖命令の危険にさらされていることなどが語られます。こういう話を聞くと、日本における報道とはずいぶんイメージが違うなと思いますね。今の日本では、「中国は反日的だ」「歪んだ教育だ」と声高に叫ばれていますが、日本も日本で正しい受け取り方をしていないのではないかと考えさせられました。実際、氏は週刊文春等日本の雑誌のインタビューを受けても、歪曲されて記事にされたことがあるそうです。本当だとしたら情けない話です。


一部日本のことを誤解している節はどうしてもありますし、全体的に著者が中国活動家に甘いように感じられる部分もあるかもしれません。それでも、中国活動家の主張と声を知るという意味では有意義な一冊だと思います。