「失踪日記」

失踪日記

失踪日記

文化庁メディア芸術祭大賞」「日本漫画家協会賞大賞」「手塚治虫文化賞マンガ大賞」の3冠達成と、帯に書かれた華々しい受賞歴に興味を引かれ、1000円オーバーはちと高く感じましたが手に取ってみました。


……なるほど、これはなかなかにすごいマンガですね。変な言い方ですが、「作品」では無くて「マンガ」と表したくなる一冊といいますか。「感動」とか「衝撃」とかいうのでは無いですが、ユーモアの中にじわじわと重みが伝わってきました。


作者の実体験を元にしたマンガは数あれど、ここまで壮絶な話というのはそうは無いのではないでしょうか。雪降る真冬の林に寝起きをし、ゴミ袋から食料をあさるなど、失踪といっても甘いレベルではありません。加えて失踪中に配管工として働くことになったり、アルコール中毒で入院したりと、興味の尽きない内容になっています。これがさらりとした画風と表現で、全然鬱々としていないところがすごい。最初に「この漫画は人生をポジティブに見つめ、なるべくリアリズムを排除して描いています」とありますが、ホント、少し想像するだけでも大変な日々であったろうなと思わされますよ。とりあえず、作者が漫画の世界に戻ってきてくれて良かった。


それにしても、世の中困った人がたくさんいるものなのですねえ……。それが一番の感想だったりします。