「フェルマーの最終定理」

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

先日読んだ「暗号解読」で、すっかりサイモン・シンさん(及び翻訳の青木薫さん)に魅せられてしまったため、すぐさまこちらも読んでみました。またまた夢中になって一気読み。「終わるのがもったいない」と思わせてくれる一冊でした。


参考:フェルマーの最終定理(wikipedia)


フェルマーに提起された予想をワイルズが証明するまでの数学界の長く、ドラマチックな物語。数学苦手でも大丈夫です。すごく楽しいです。最後、ついに解き明かされる証明方法のエレガントなことといったら!


フェルマー予想が成り立たないとすると、得られる式は谷山=志村予想に反する」→「よって谷山=志村予想(の一部)が成り立つのなら、フェルマー予想は正しい」


もちろん本書では細かい数式までは触れられてませんし、書かれても分からなかったでしょうが、上の流れを知っただけでも感動ものでした。数百年前の孤立していると思われていた問題が、現代最先端の予想とリンクしていたとは! これが数学の醍醐味なんでしょうねえ。僕にも数学の才能があったらと思いますよ。日本人としては日本の数学者の名前が出ているところもうれしいではありませんか。


ちなみに、歴々の数学者がこんだけ苦労したとなると「フェルマーは本当にこれを証明できていたのか?」という疑問が当然出てくるわけですが、やっぱり「勘違い説」が有力なのですかねえ。そうなると彼の勘違いが数百年の努力と、結果としての実際の証明を生んだわけですから、不思議なものです。


本書では、次の注目問題として「ケプラー予想」をあげていますが、これは本書の執筆後に証明されてましたね。そちらのは別の著者の本で読みましたが、現代的にコンピュータの力業なところがあって、数学的にはいまいち面白くない証明と評判のようです。本書でも「4色問題」がコンピュータで解かれたことに触れ、時代が「エレガントな証明」から離れつつあることを示していました(こちらの本も読んでみたいなあ…… )。さて今後はどうなりますか。


ともあれ、僕はすっかりサイモンさんと青木さんのファンです。今度このコンビで宇宙論の新刊が出るらしいので楽しみですね。