「プリオン説はほんとうか?」

BSEといえばプリオンプリオンといえばBSE、提唱者のプルシナー氏はノーベル賞まで受け、いまやすっかりこの説が定着した感がありますが、そこにあえて異論を述べる一冊です。刺激的なタイトルのために「さてトンデモ本か?」という警戒もしつつ読み進めていったのですが、さにあらず。なかなかに真摯で説得力のある論と見えました。
プリオン説の革命的なところは、なんと言ってもウィルスや細菌といった病原体ではなく、たんぱく質そのものを病因とするところにあるでしょう。様々な状況証拠がこの説を支持しているように見えます。しかしながら著者は「プリオン説は完全ではない」としていくつかの弱点を指摘し、未知のウィルス説を示唆します。読んでいき、確かにプリオン説には問題も多いのだなと考えさせられました。なお、著者は(当然のように)プルシナー氏に対して批判的ですが、その研究の成果については一定の評価もしていますし、単なるアンチ本ではないと思います。
もちろん「アンチプリオン説」の最大の問題点は、その病原ウィルスが全然さっぱり見つかっていないところにあるわけなのですが、著者は目下全力で研究中とのこと。もし病原体が見つかりプリオン説がひっくり返ったら日本発の偉大な業績なので、頑張ってもらいたいとは思います。