「ブルースカイ」

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

作者が桜庭一樹さんですからね、こりゃ読まないと、ということで買いました。中世ドイツ、近未来のシンガポール、そして現代の鹿児島と3章に分けて書かれたSF……と言って良いのでしょうか。微妙。ファンタジーかもしれません。とにかく今回はイラストも一切無いですし、出版もハヤカワ文庫ですから、他の作品とは一味違う雰囲気ですね。少なくともキャラクターの魅力で引っ張るというつくりではありません。こういう差異を見ると、「ライトノベルというのはつまるところキャラクター主導なのだな」と思わされたりもいたします。
さて評価なのですが「惜しい」というのが率直なところ。決してつまらなくは無いのですが、ちょっと荒削りというか、物語が弱いように感じられました。中世の描写にしろ、近未来の描写にしろ、頑張っているとは思いますがまだ薄いです。さらに緻密で重厚に紡ぎあげられていれば良かったのですが……(極端な話、それだけで一巻になるくらいに)。あと、全体通してみて結局何がやりたかったのかいまひとつ伝わってこないのも難点かと。第3章の、少女のやりきれないような日常描写、心理描写はさすがでしたが、それだけ単体になっちゃっているような気がしましたね。
意欲作として桜庭さんの今後が楽しみになる一冊ではありました。10年後くらいにリライトされたりすると面白いかも、と勝手なことを考えてみたりします。



なお印象的だったのは、第3章におけるカラオケの描写。浜崎あゆみの歌詞に少女達が思いをのせるのだとすれば、オタクな者は一体何に代弁してもらえばよいのだろう、などと思いをはせたりいたしました(汗)。