「宇宙 起源をめぐる140億年の旅」

宇宙 起源をめぐる140億年の旅 (ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス)

宇宙 起源をめぐる140億年の旅 (ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス)

宇宙とは一体、どこから来てどこへ行くのだろうか……。難しい数式は分からないけれど、最新の宇宙論を知りたいという僕のような人間にはピッタリの入門良書でした。著者は人気科学ライターらしく、文章はユーモアを交えて軽快。翻訳もこなれています。とりあえず一番の収穫はなんで「炭素型生物」が重視されるのか分かったことですかね。別に他の物質を中心にした宇宙生命がいても良いじゃないかと素人的に疑問でしたが、科学的な根拠があったのですか。奥が深い。
それにしても、考えれば考えるほど宇宙は不思議です。あまりにも巨大、あまりにも悠久。文字通り天文学的スケールの話に頭がくらくらしてきますね。そもそも、初めの初め、なぜこんな時空が出現したのか。量子力学的に無から有が発生すると言っても、ストンと納得するようなものではありません。トンネル効果で粒子が現れるたって、じゃあその粒子という存在なり概念なりはどこで発生したんだと問いたくなってしまいます。いや、それを世界中の宇宙学者が考えてるんでしょうど。
考えてみるのですが、もし全宇宙で地球上にしか生物がいないとして、それが死滅したら、どうなるのでしょうか。普通に考えればそのままあり続けるのでしょうけど、生存者も観測者もいない宇宙は「存在している」と言えるのでしょうか。どうもそんなことさえあやふやになってしまいそうです。
もっとも、個人的には地球外にも生物は存在するとほとんど確信していたりはします。これだけたくさんの星があって地球だけ特別なんてことは無いでしょう。コンタクトを取るには絶望的な距離があるのでしょうが、今このとき、その他星の生物も「宇宙人はいるのかなあ」と思って空を見上げているかと考えると、少し愉快です。まあ相対性理論的には離れた場所で同時という概念は使いにくいのですが、そこはそれ。
残念ながら、僕が生きている間に宇宙のすべてが解明されることは無いでしょう。人類の文明でどうにかなるかすら怪しいかもしれません。でも、何とか一歩づつ進んで欲しいと思いますね。せめて火星かエウロパあたりで生命でも見つからないものかと、期待してみます。