Quartett!

Quartett! 初回版

Quartett! 初回版

まず一言。


「すみません、読み方間違っておりました」


どうも最初の「Qu」の時点で思考停止してしまっていたらしく、「キュアレット?」などといい加減に頭の中で翻訳しちゃってました(汗)。間にちゃんと「t」が入ってますって……(そもそも、音楽物と知れば分かりそうなものです)。


……ということで、LittleWitchさんのフローティングフレームシステムゲーム第二弾「カルテット」です。「音楽院に弦楽器が響く」 あまりに魅力的な舞台設定に、ほとんどそれだけで購入してしまいましたが、なかなかに楽しめました。学園生活での友情と恋、音楽に対する努力と不安、そして発表会での達成感……。ある意味、シンフォニック=レインに期待して得られなかったものをここで見つけた感じです(まあ、SRは別方向で傑作だったので文句は無いのですが)。水彩風の独特な絵柄も温かくて良いですね。では以下個別論点をサクサクと。



●シナリオ・キャラクター
シャル→ユニ→スーファの順に進行しました。スーファシナリオには結構暗い展開もありますが、全体的に重苦しくなりすぎないシリアスさが良かったです。色々悩みつつも、仲間達と共に過ごす学園での日々。泣くような話ではありませんが、好感のもてるつくりでした。主人公のフィルはおチャラけながらも、決めるところは決める良い男。その前向きさが作品全体の雰囲気を良くしてましたね。一応メインヒロインはシャルでしょうか。彼女に関してのエピソードが多いなと感じられました。他の二人がやや脇役気味に収まってます。大きな欠点は無いシナリオ運びではありましたが、いかんせん話が薄く、ボリューム感に欠けるきらいはありました。共通部分も多いので、二人目以降のシナリオはスキップ経由でかなりあっという間。「大作」をプレイするときの疲れがなくて社会人には助かる部分もありますが、各キャラの魅力をもっと深く書いて欲しかったなと、やや物足りなさは残りましたね。良くも悪くもまとまった小品と言えましょう。
なお、H部分は……まあ話の展開的にはあっても良いのですが、どうもいちいち読んでいる気にはなりませんでした。32倍速スキップ済み。PS2版移植がもっと早くなされていれば最初からそっちを選んだと思います。


●音楽
音楽がテーマの作品だけに、この部分が外れていては話になりませんが、そこはさすが。弦楽器の美しい演奏が作品を彩っています。クラシックの名曲達はもちろん、オリジナルの「set Piece」に「咲き誇る季節」といった曲も負けていません。反面、弦楽器以外の曲がやや印象に残りにくくはなっちゃってますけど。初回限定版(パッケージのどこにも書いてないので通常版かと思ってました)付録のCDは弦楽器ファンにはたまらないものがあるのではないかと。


●システム
前作、「白詰草話」未プレイにつきほとんど初体験のフローティングフレームディレクターシステムですが、なるほど、これは面白いですね。Fateやはるのあしおとの演出がどこかアニメを目指していたとするならば、こちらは動く漫画という感じですか。個人的に驚いたのは他の作品では全然使ったことの無いオートプレイを、この作品では全編に渡って利用したことですね。ビジュアルノベル作品においては「クリックすること」こそが重要なゲーム性だと思っていたのですが、そういう感覚を全然受けず、流れる物語を見ていけたという点で、実に独特な作品だと思いました。ただ欲を言えば声は欲しかった。これも他の「ノベル」では感じないことなのですが、このシステムではやたら声が聞きたくなっちゃいました。スピード調整がやや難しそうではありますが、PS2版ではどうなるのでしょうかね?


●絵
最初に書きましたが、この水彩風独特の絵柄は個性的で魅力十分。ありがちなアニメ塗りと一線を画したつくりは見ものでした。ただFFDシステムとあわせて、原画の大槍葦人さんにはやたら負担かかりそうではあります。作品が短めになるのもある意味納得?


●総評
力の入ったシステムに魅力的なCG、シンプルながら好感度の高いシナリオは十分に水準点以上の良作だと思います。コストパフォーマンスがやや悪い印象もありますが、クラシック好きな方ならアレンジCDで穴埋めできるのではないかと。