砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

――山田なぎさのクラスに転入してきた少女。彼女は端整な容貌と「海野藻屑」というとんでもない名前の持ち主であり、自らを人魚の姫と言い張るおかしな娘だった。藻屑につきまとわれつつも、彼女の言動に反感を覚えるなぎさだったが――


……ええと、一言でいって傑作だと思います。全編を漂うどんよりとした物憂さ、世の中に対する反発心と、自身の無力さへの苛立ち。クラスメートとの微妙な距離感覚。「思春期の暗さ」が見事に表現されている世界で、主人公であるなぎさの心の動きが近くに感じられる描写には感嘆でした。また、この暗い話を読ませるだけのお話の勢いもすごいです。あとがきによると作者はこの作品を割と一気に書いたとのことですが、さもありなん。それでいて構成も破綻無くまとまっているのですからもはやスキ無しでしょうか。一見可愛らしく思えるタイトルの意味づけがまた上手いです。哀愁と悲壮と絶望があり、そして多分それらだけではない何かが心に残る。そんな一作でした。
特に印象的だったのは、やはりなぎさと藻屑とのやりとり。安易な評かもしれませんが、やはりなかなか男性作家には書けないものがあったと思います。


それにしても、これはライトノベルという分類でくくって良いものなんでしょうかね? べつにラノベの定義を狭く取るつもりはありませんが、一般文芸として評価されても面白いのではないかと思いました。