「対話型講義 原発と正義」

対話型講義 原発と正義 (光文社新書)

対話型講義 原発と正義 (光文社新書)

福島第一原発事故を受け、「そもそも原発は正義なのか」を徹底的な対話から問い直そうという一冊。著者はサンデルの「これからの正義の話をしよう」にヒントを得て様々な意見の人々と議論を戦わせることで、原発の将来と解決策を模索します。


読んでいて思ったのは、議論の内容そのものよりも「ああ、原発に対するこうした敏感な態度を、僕はもう忘れてしまっていたのだな」ということであったりしました。本書は2012年3月の出版ですが、当然討論自体はそれ以前に行われたものでしょう。震災直後の不安感、危機感がひしひし伝わってくるのであり、それに比べて今の自分は原発問題などすっかり忘れさって電気を使用しているじゃないかと。


まさに喉元過ぎれば熱さを忘れるというやつですが、実のところ事故が終息したわけでもないし、ましてや原発問題が解決したわけでは全然無いわけで、自分の浅さを反省させられました。


さて、本書ではもちろん原発の危険性、コスト、代替エネルギー等々について語られるわけですが、単に経済環境の面だけに着目するのではなく、「一部地域に偏った負担をかけ、廃棄物の処理方法も確定していないような状況で原発を運用することは、それ自体不正義ではないか」という問いかけが印象的でした。