「まっとうな経済学」

まっとうな経済学

まっとうな経済学

これだけ「不況だ」とか「財政赤字だ」とか言われていると、経済とは一体なんだろう、と根本的なところが気になってくるわけで、経済学の基礎をおさえるべく入門書を読んでみるのです。


本書はタイトル通り(「ヤバい経済学」を意識した邦訳らしいですが)、かなりまっすぐに、王道な経済学の理論を分かりやすく示してくれます。「自由貿易は世界的な成長を生み出し、保護主義は割に合わない」という基本的なところから、「『フェアトレード』のような小手先の手法では、貧困の根本的解決にはならない」「発展途上国で先進国の工場が搾取しているようでも、そこの労働者にとっては他の選択肢よりもマシだからこそいるのだ」といった、安易な通念をくつがえしてくれる刺激的な話もたくさん。面白く読めました。


著者は冷徹な市場原理主義者というわけではなく、グローバル化が生み出す苦しみ―輸入品に押されての解雇・転職や、文化の断絶―の面についても気をくばってます。搾取を認めているわけでもありません。しかし、大きな目で見れば、自由に交易していくことが、一番の成長の元であるということなんですね。ユーモア十分な筆致と合わさって、もっともだと思わされました。


ただ……。


もっともである反面、本当にそんな簡単で良いのかな、と思ってしまうのも確かなんですよね。何となくつかみ損ねている感覚があるのか。一体「経済が成長する」ってどういうことなんだろうか、と今日も今日とていまいち分からないのでした。もうちょっと勉強したいところです。