「歴史の終わり 上・下」

歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間

歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間

歴史の終わり〈下〉「歴史の終わり」後の「新しい歴史」の始まり

歴史の終わり〈下〉「歴史の終わり」後の「新しい歴史」の始まり

一昔前に話題になった本ですが、いまさら読みました。1992年に出版(アマゾンのリンクは新版ですが)とのことですが、今見ても刺激的な内容でありました。


著者の主張は「人類の歴史は、リベラルな民主主義に収束していくであろう」というもの。その一つの理由は、現にここ数百年にわたりリベラルな民主主義国が増加しているという事実です。


ただ、これだけでは「一時的に優勢なだけで、また他の体制が出て来るのではないか」という疑問も出てきます。そこで、著者が本質的な理由としてあげるのが、人類がが本来もつ「気概」です。


民主主義の欲求は、人が尊厳をもった存在として対等な認知を求める「気概」から生まれるのであり、その「気概」をある程度満たすからこそ、民主主義が広がるのだということ。なるほど。なかなかに納得させられます。


もちろん著者はリベラルな民主主義体制が完璧であると言っているのではないですが、少なくともこれまで歴史上出てきた体制の中では人間の本性にもっとも適合すると見ているわけです。なんだかチャーチルの言葉みたいですね。


渡部昇一氏の訳はさすがにこなれていて読みやすかったのですが、後書きで「日本型の繁栄は南北アメリカよりも優れてきているのは明らかだ。日本がさらなる歴史の始まりになるのではないか」的なことを書いているのは、今になって見ると痛いものがあります。なんともねえ。