「軌道エレベータ―宇宙へ架ける橋」

ガンダム00にも重要な背景として登場するなど、次第にポピュラーになってきた(ような気もする)軌道エレベータ。本書はタイトルずばりそのもの、軌道エレベータについてコンパクトに分かりやすく説明した一冊です。


「ロケットなんてお金がかかるし危険が大きい。それより宇宙までエレベータで行こう」というコペルニクス的転回の発想。最初に考えた人はソ連の人ということで、しばらく西側諸国では知られなかったそうです。どうもこういうところ、冷戦というのは無駄ですな。


軌道エレベータと聞いて真っ先に思いつくのは通常の塔タイプですが、本書では他にも観覧車のような回転型や、リング型も紹介されています。いずれも理論的には十分可能とか。……ただ、この「理論的には」というのが厄介で、実際はやはり相当大変そうです。さすがに以前の恒星間旅行よりは現実的ですが(というより、このくらいできないと恒星間旅行なんてできるはずないですね)、新材料を開発しないと行けませんし、作るのにどれだけのコストがかかるか。ひとたび開発さえしてしまえばその後楽になりそうですが、果てさて、2300年までに出来ますことやら。


後書きによると、本書は世界で初めての軌道エレベータ専門解説本だそうです。その後10年経ちますが、アマゾンで検索する限り、少なくとも日本では類書は無いようです。著者の先見の明というべきか、軌道エレベータが盛り上がって無いというべきか、ちょっと寂しいところではあります。