「ガンパレード・オーケストラ 白の章」

アニメはいまいち不評だったガンパレオーケストラ。僕も青森編限りで見るのをやめてしまいましたが、それでも主人公の石田咲良が結構魅力的なキャラだったので捨てがたく、小説版に手を伸ばしてみました。これがなかなかに良い出来です。さすがガンパレード・マーチでもしっかりとした世界を書き出していた榊さん。アニメでもこんな感じにやってくれてたらなあ、と思うばかりでした。


事実上の左遷で青森の軟弱師団にやってきた咲良の奮闘と、隊員たちの成長。多いキャラクターも1巻の中で無理なく描写され、咲良自身、アニメの優等生キャラから一味変わった、真面目だけれども暴走してしまいがちな、長短合わさったキャラとして書かれています。隊員たちとの絆を深めていくまでの人間関係、そしてもちろん幻獣との戦いも読ませてくれました。しかし隊長というのは大変な仕事だ……。15歳でここまでこなさないといけないとはえらいことです。


しかしこの世界は理不尽ですよ、本当。「戦争に向かない」というのは兵としては泣き言ですが、そういう人にまで戦争をさせる非常状態というのが、そもそも間違っているわけで。まあ、人類は絶望的状況下なのに妙に日常的な世界観というのは前作から引き続く違和感でもあるところですが……。


それはともかく、ガンパレの一定以上のファンなら買いの一冊でしょう。どう見てもアニメ版より出来は良いと思います。これで終わりといわず、「白の章」だけでも続きが読みたいものですね。