「老ヴォールの惑星」

僕の小川一水さん歴は「導きの星」→「回転翼の天使」→「第六大陸」→「復活の地」と来ております。どの作品もSF的発想の妙もさることながら、人間や技術への信頼感が根底にある前向きな読後感が心地よい。まあそれがやや甘く見えたりすることもあるわけですが、間違いなく面白い作家さんだと思いますね。この「老ヴォールの惑星」も評判に違わずの短編集でした。


個人的には最後の「漂った男」が一番面白かったと思います。広大な惑星海洋上に浮かぶ男の姿が絵に浮かぶようでした。「老ヴォールの惑星」はタイトルに入っている老ヴォールが意外と目立たないのですが、その遺志がつながっていくのがいかにも小川さんらしい心地だったかと。


海外SFも良いのですが、いかに名翻訳者でもどうしても日本語感覚的に読みにくい場合がありますからね。日本の作家が良いSFを書いてくれるとその点ありがたいです。