「フーコーの振り子」

フーコーの振り子―科学を勝利に導いた世紀の大実験

フーコーの振り子―科学を勝利に導いた世紀の大実験

大きな振り子が悠々と揺れていたのは、あれは上野の科学博物館でしたっけねえ。実は地球の自転を証明する結構偉大な発明品なのです。この本は、その振り子を開発したフーコーと、彼をめぐる人々を軸に、19世紀半ばのフランス科学の世界を書いていきます。
意外だったのは、フーコーが当時専門の科学者、数学者だったのではなく、アマチュア技術者とみなされていたということです。彼の有無を言わせぬ業績に対しても、アカデミーが長年冷淡だったというのは知りませんでした。もっとも、科学好きの皇帝・ナポレオン三世に気に入られ、最終的には栄誉を得ることにも成功するわけですが。
このナポレオン三世というのもなかなかに不思議な人物で、先日ナポレオンの伝記を読んだだけに、余計興味深く感じられました。ただ伯父の名前を継いだだけの誇大妄想放蕩青年かと思いきや、あれよあれよで本当に皇帝になってしまうこの不思議。このころのフランスは王政、共和政、帝政を行きつ戻りつしているのが面白いです。
実を言うと、僕はこの本を読んでもまだ振り子の原理が理解できたか怪しい気もするのですが、単純な割に意外と原理は難しく、当時の科学者達も説明に苦しんだようです。「地球の自転」ということの実際的証明が19世紀中ごろになってようやく見出されたというのもまた意外でした。


P・S 「フーコーの振り子」の語呂がやたらに良いのが、日本語の偶然ですね。日本でフーコーの振り子が結構人気あるらしいのも、そこに遠因ありと見ます。