「靖国の戦後史」

靖国の戦後史 (岩波新書 新赤版 (788))

靖国の戦後史 (岩波新書 新赤版 (788))

戦後の靖国神社の歩みを通して、国家と死者との関わり、そして政教の分離を問い直す一冊。岩波らしく、という表現も何ですが、全体のトーンは批判的で、この前読んだ靖国問題」に論調は近いものがありました(というより、「問題」の方がこちらを参考にしている節がありますかね)。これら著書の靖国神社のとらえ方を簡単にまとめると「国が死地に追いやった人々を英霊と称して祀りあげ、遺族の怒りを回収・回避するシステム」ということになりましょうか。だから靖国神社に参拝するということは無意識的であってもその機構、物語にのせられているということになるわけです。
……う〜ん、まあこれはこれで間違ってはいないと思うのですが、自然な遺族感情・国民感情としてはそういう機構も必要ではないかという気もしますし、「たとえ非宗教的追悼施設を作ったところで問題は同じ」とまで割り切れるのかどうか、微妙な気もしますね。「国を思い犠牲になった」人、あるいは「国によって殺された」人に対して、国家はどう向き合うべきなのでしょうか……。
ただ少なくとも、クリスチャンや仏教徒、あるいは外国の人達が望まないのに勝手に合祀されるというのは靖国神社に傲慢さを感じるところです。「教義上取消はできません」の一点張りではそれこそ遺族無視で人情が無いのではないでしょうか。違憲として訴えを起こした人に対して中傷嫌がらせが相次いだというエピソードには心が重くなりました。