「暦と数の話―グールド教授の2000年問題」

暦と数の話―グールド教授の2000年問題

暦と数の話―グールド教授の2000年問題

いまとなっては2000年問題も新世紀も過去の話となってしまいましたが、ミレニアムな暦にまつわるエッセイとして楽しく読める一冊でした。特に興味深かったのは、「世紀が変わるのは00年か、01年か」という問題について。この論争は意外と歴史が長いらしく、この数百年、世紀の変わり目のたびに喧々諤々のやり取りがなされてきたらしいです。かたや感情、かたや理屈において正しいので、決着のつきようが無いとか。日本ではどっちかいうと01年説が優勢だとおもいますが(日本人は論理重視なのですな……)、欧米では次第に00年説が優勢になってきたらしいです。もっとも、次に勝負になるのは100年近く後でしょうけどね。ちなみにこんな論争がおきのは、紀元前1年の次が紀元1年になってしまっているためですが、これは紀元を定めたときのヨーロッパにはゼロの概念が無かったためだとか。数学の歴史がこんなところに影響を及ぼしているとは面白いものです。
もっとも、毎回毎回こんなことを続けていてもらちがあきません。文中で著者は問題解消のための提案を二つ紹介しています。「(切り替わるのは)2000年だよ。最初の10年代は9年しかなかったんだ」「紀元0年は設定できる。紀元前1年すなわち紀元0年としてしまえば良いのだ」 後の方の案なんて、昭和64年イコール平成元年みたいな理屈でよいですねえ。ホントにこうしてしまえばよいのに。
著者のグールド氏はこの手の一般向け科学本の大家だけあって、文章は読みやすくて面白いです。人柄も良さそう。でも、「人間の本性を考える」ではピンカー氏に散々批判されてましたっけねえ。学問の世界も大変です。