空を見上げる少女の瞳に映る世界 第9話「愛すること」

始まったと思ったら最終回という感じの今作でありました。元OVAという事情からでしょうが、全9話というのはかなり珍しい構成と思います。ただ、その9話でうまくまとまったと評するには、厳しいものがありました。


京アニらしい動きの良い作画。可愛らしいキャラクター。練られた(のであろう)世界観に、声優さんたちの好演。これだけのものがそろっていても、面白くなるとは限らないのがアニメの難しさでしょうか。


端的に言うと、「結局何を見せたかったのか分からない」ってことなんですよね。序盤はすごく魅力的でした。ユメミにしか見えない空の世界。まさにファンタスティックな設定です。だから、天上界を見せてしまう前に、「自分は他人と違う」という彼女の悩みや、友人達とのほのぼのをもっと見せておけば良かったと思うんですけどねえ。


せっかく大掛かりな舞台を用意しながら、天上界での戦記になるでもなく、ムントとの交流を深く描くでもなく、やったことといえば、ユメミが最後まで根拠不明な力で世界をつなげたことだけ。最後に突然ユメミに分かったようなことを言われても、過程が不足しているので、伝わってこないのですよ。あのシーン自体はどこか神話的な雰囲気を感じさせて、単独では結構良かったのですが。


なお、今回一番の褒めどころはエンディングです。今作のエンディングは絵も歌も温かくて良いですねえ。



総評するならば、「惜しい作品」。残念ながら、MUNTOがいまいち評判にならなかったのも理解できました。劇場版公開という事ですが、そこまで力を入れるべき作品なのか、失礼ながらクビを傾げてしまいます。それも全編新作ならまだしも、「ディレクターズカット版」ですからね。「天上人とアクト人最後の戦い」とか、タイトルがお子様向けっぽいのはあえてなんでしょうか? 面白いといえば面白いセンスなんですが。


それにしても、カズヤとスズメの川越えエピソードの意味はなんだったのでしょう……。