「構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌」

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌


今にして振り返れば、小泉政権はやはり一つの時代だったのだなあ、とほんの数年前のことなのに、そう思います。小泉総理は国民に強くアピールする能力を持った政治家でしたし、世界景気の後押しもあったとはいえ、日本も好景気となりました。それになにより、1年で首相がコロコロ変わったりはしなかった。小泉以後の総理を数え上げようとすると、日本人ですら少し迷うくらいですから、海外から見たらやってられないだろうなと思います。


で、本書はそんな小泉政権のブレーンであり、顔でもあったおなじみ竹中教授による回顧録。当時の竹中大臣がいかに総理と協力し、有識者の助力を得て、改革を実現していったかということが迫力ある筆致で書かれていきます。


何しろ自著ですから、都合の悪いことは書かれていないでしょうし、どうしても「正しい改革派の総理と自分 VS 党内やら野党やら官僚やらの抵抗勢力」という分かりやすい図式になってはいるのですが、まあ、それほど嘘も書かれていないでしょう。


感銘を受けるのは、改革に向けてのぶれない姿勢もさることながら、それを実現するための戦略戦術をきちんとねり、突き進んでいるところです。官僚の小細工に惑わされず、むしろしっかりと官僚の力を利用していく。今の他の政治家にも、もちろん理想や意思はあるのだと思いますが、さて、これだけの胆力知力を持ち合わせ、政策を実現にもっていける人はどれだけいるか。大事なのはその突破力なのだと感じさせられました。


小泉改革については賛否両論ありますが、不良債権問題の処理は大きな功績でした。本書を読むと、「ともあれ竹中先生、お疲れ様でした」と言いたくなります。