Fate/stay night [Heaven’s Feel]

我々は13年待ったのだ―――とでも言うべきところでしょうかねえ。とうとうこの時が来たか、と感慨深いFate・桜ルート、Heaven’s Feel編の開幕です。原作プレイ時に桜はかなり印象に残ったといいますか、応援したくなるキャラだったので、ここでようやく日の目を見ることになるのは嬉しいですねえ。もっとも、このルート自体は長くて鬱陶しくてグログロしいので一度しかプレイしておりません。適度に忘れているのが映画鑑賞上、さらにプラスになりそうです。


てことで、映画の内容ですが、3部作とは言えやはり多少のダイジェスト感はありましたかねえ。そこは原作の長さを考えればしょうがない。もっとも、UBWの劇場版と比べれば全然ゆっくりですが。逆に言えば、ケチを付けられそうなのはその程度で、全体的には大変力の入った素晴らしい出来栄えでした。監督のパンフレットコメントからしても、桜への愛を感じますよ。


構成として、最初に士郎と桜の出会った時期から描き出しているのが良いですね。だんだんと絆が深まっていく二人の姿があるから、桜がヒロインであるということが観客にもすんなりと入ってきます。そして、物語はおなじみの聖杯戦争開幕へと流れていくわけですが、セイバー召喚やランサーとの戦いをほぼすっぱりと省略したのは大英断でしょう。もうそのへんの共通ルート部分はFateファンなら何回も何十回も見ているところですからねえ。初見の人には優しくないかもしれませんが、そこで尺を取っちゃうのはもったいないという判断もあったことかと。


予想以上の迫力だったのがアクションシーンでした。もちろんZeroやUBWでもおなじみのufotableさんなので期待値は高めでしたが、期待以上のすごい画面。特にランサー対真アサシン戦はハイライトでしたね。これが劇場版の力ということでしょうか。「Heaven’s FeelもTVで見たかったなあ」などとぼんやり思ってもいたのですが、こんなクオリティを見せつけられては文句の言いようもありません。あとufotableさん関連で言うと、イリヤとセイバー、そして切嗣絡みのシーンでは、同じ本作がFate/Zeroの正統な後継作品であることを感じさせられたりもして、上手い演出でした。


さて、主人公である士郎と桜。士郎はあの災害のトラウマによって少しねじ曲がった性格になってしまっているわけですが、本ルートでの彼は一番人間味があるというか、比較的普通に見える気がします(まあそれでもバーサーカーに突っ込んでいったりするわけですが)。そしてそんな士郎に思いを寄せる桜ですが、普段の健気さの中に、時折見せる暗さと危うさがなんとも桜なわけです。士郎と慎二のケンカを止めるところの叫びが、普段の、「士郎の前で見せておきたい自分」から外れてしまった辛さが垣間見えて切ないといいますかねえ。境遇的にも人気的にも不憫な印象の彼女ですが、とにもかくにも本作メインヒロイン。全力で頑張ってもらいたいものです。


間桐臓硯と真アサシン勢の暗躍、「影」に飲み込まれていくランサーやセイバー。本ルートらしい不穏な空気を残しつつ、物語は次回へ。第2部は来年公開ということですが、来年のいつ頃なんですかね。第3部となるとさらに先になってしまうわけで、気の長い話です。まあ、冒頭に記したようにここまで13年待ったのですから、それに比べればどうということもないですか。まさか本作がここまで寿命の長いブランドになるとは、恐れ入りますよ。