”引退試合”を考える

日本シリーズもたけなわですが、考えさせられるコラムがあったのでご紹介。


公式戦での引退試合は是か非か? カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』


引退試合に関する議論と言えば、「野球の記録で話したい」で広尾晃さんが反対論陣の急先鋒を張っておられるわけで、「公式戦に引退試合の茶番を持ち込むな」はその代表的な記事になるわけですが、カネシゲタカシさんは反対論に理解を示しながらも、引退試合について「是」とされているのが興味深いところでした。


「“神聖なる公式戦の一片を捧げることで「選手」を「人間」に戻す祝祭的儀式”」という表現には唸らされるものがあります。なんというか、神道的な、いや、もっと根源的に日本列島に連なるアニミズム的な心性が、NPBの引退試合にも宿っているということでありましょうか。ここまで話を広げられると、なるほど、西欧文明の歴史の浅いスポーツの、たかだかちょっとした数字や建前が何だというのかという気持ちにさえなってしまいます。


いや、でもねえ。野球はやっぱりスポーツで、公式戦は真剣勝負なわけで……。


僕はどちらかと言えば反対派です。と言うより、中間派の反対よりといったほうが正確でしょうか。すなわち「消化試合での引退出場は認める。ただし、それ以上の手ごころは認めない」という立場。同じ感覚の人は結構多いのではないでしょうか。やっぱり、プロが試合に出ている以上、わざと三振するとか、打たれやすいように真ん中にまっすぐを投げるとか、それはやってはいけないことだと思うのですよ(投手が疲れないように三振するというのは戦略的なものなので別です。念のため)。プロである以上、最後まで真剣勝負。それこそが礼儀ってものじゃないでしょうかねえ。


あと、下手にこうした「空気を読む」ことを肯定してしまうと、次第になあなあの意識が広がっていきそうなのも不安な点で。今はまだ引退試合限定(と思いたい)ですが、そのうちたとえば「完全試合まであと一人だから空気読んで凡退しろ」とか「3割まであと一本だからわざと打たせてあげよう」とか、こんな感じになってしまいそうで怖い。やはりそこは線引きしておきたいと。


NPBはそろそろ「引退試合での手加減プレイは敗退行為に類するものなので控えるように」という注意喚起を公式に行うべきじゃないかと思うのですよね。真面目な話、今の調子で引退試合が増えていくと、あと2、3年の内にはそうしたコメントが出てきそうな気がするのですけど。