「シン・ゴジラ」観たよ

これまでゴジラシリーズはハリウッド版も含めてまともに観たことがないので、今回も取り立てて興味をもってませんでした。ではありますが、なんだかやたら評判が良いことを聞き、それになにより「あの」庵野監督であるからして、これは観とかないとならないか、と方針転換したわけです。


一言で言えば面白かった。他のゴジラ作品を見ていないので断言しかねるところではありますが、これがゴジラの迫力と恐怖というものかと、新鮮な驚きでした。ゴジラが巨体を揺らして歩き、熱線を吐き出し、ビルはなぎ倒され、戦闘機は撃ち落とされる。この圧倒的な存在感ときたら。


対応する日本政府側は、会議の山と法令のすり合わせと各省庁間の縦割りとがこれでもかというほどに描かれていて、こちらも新鮮。普通の怪獣映画だと自衛隊は割と簡単に出動しているようなイメージですが、実際にはこんな感じのてんやわんやなんだろうなと(いや、実際にはもっと大混乱でしょうが)。


映像的には、自衛隊アメリカ軍による(「アメリカ軍」と言わず「米軍」と言うのは監督のこだわりかなにかなんでしょうか?)ゴジラへの攻撃が華々しい見せ場。まあ、効かないんですけどね。でも10式戦車が火を吹いたり、B-2が3機も飛んで来るなんて派手で良いです。冷静に考えれば任務にステルス性能必要ないので、B-2じゃない普通の爆撃機で良いんでしょうが、そこはそれ。


それにしても、予想以上に作りが「庵野節」でしたね。画面の構図、カットの仕方、セリフ回しに、次々と挟み込まれる明朝体の字幕しかり。「いくら庵野さんでも実写だとまたアニメとは違う作りをするんだろうなあ」なんてのんきなことを考えてましたが、冒頭からトップスピードで庵野さんなので驚嘆しました。で、監督は樋口真嗣さんで音楽が鷺巣詩郎さんとくれば、一体自分はゴジラを見ているのか、それとも実写版のエヴァを見ているのかという幻惑を覚えるほどでしたよ。ただしもちろん日本政府にエヴァンゲリオンはないので、事実上人間の力だけで戦ったラミエル戦が状況近いでしょうか。エヴァ好きな人ならこの雰囲気を味わうだけでも必見ですな。


そしてもう一つ、明らかに誰もが感じたであろう「3.11」との接続が印象的でした。最初は災害の中でもちょっと余裕があってスマホで動画撮影したりする人々。崩れた建物と瓦礫の山。そして放射能の不安。これらの光景をつい5年前の現実として見てきたからこそ、ゴジラの恐怖がいよいよリアリティを増します。考えて見れば、ゴジラは初代から核兵器批判というモチーフを内蔵していたわけですが、それが現代に来て原発問題ともリンクしたというのが皮肉というか、あるいは、時代を超越しているというべきでしょうか。


細かい点で「もっとああだったら」という不満もなくはないですが、満足の一作でありました。さすが庵野さん。