「とある飛空士への誓約 9」


「誓約」の最終巻にして、「飛空士」シリーズのラストエピソード。激化する戦いの終焉と、彼ら彼女たちの行く末がたっぷりつめ込まれた512ページ。それでも、終わり近くはページをめくるのが惜しい心持ちでした。


うん、そして……終わってしまいましたね。


感無量といいますか、どこか虚脱感といいますか。ハッピーエンドなのに寂しいのは不思議なものです。でも良かった。世界に平和が訪れたとはいえ、ミオとライナ(トマス)が5人と別れたままでは寂しすぎましたが、最後に、歌国さんがグッドな仕事を果たしてくれようとは、予想外も予想外。


「友情は永遠だ」


その誓いは破られることなく、7人の再会と、少年少女の新しい出会いによって物語は幕を下ろすのでした。


それにしても、清顕がイリアを選んだのはちょっと意外でしたね。あくまでミオ一筋でイリアが泣くことになろうかと思ってましたが。いや、これはこれで個人的には大いにアリなのですが、流れ的にはやや唐突だったかなと。意外性重視だったのかな? それとも、当初の構想ではミオだったのが変わったのか。ちょっと気になるところではあります。Amazonではこの点に苦言を呈しているレビューもありますね。確かに伏線は不十分だったかもしれないなあ。


あと、奇襲とはいえ、プレアデスの地上軍はもうちょい働かなかったのかと。ゼノンもあっさりやられすぎで、悪役の魅力が減少しちゃいました。まあ、そのへん書き出すとまだまだ終わりそうになかったでしょうが(「恋歌」にも感じましたが、どうもラストが巻きに入る印象があります)。


本作ではカルエルとクレアの恋物語も完結。かつての宣言通りにクレアを取り戻したカルエル。良かった良かった(しかし、ウルスラ伯爵夫人の犠牲は辛い……)。「恋歌」単体では中途半端だったので、これでようやく「恋歌」も終わったという感じです。もっとも、今作ではどうしてもカルは脇役なので、スポット的な描写にとどまってしまったのはもったいない感もありますが。


それと海猫さんこと狩乃シャルル。「追憶」の時は、その後どうなったか分からない的せつないラストだったのに、割と元気にやってますね。現状の立場がよくわからないのですが、レヴァーム航空隊に所属しているんなら、普通にファナと上司と部下で会ったり話したりする機会くらいはありそうだよなあ、と思ったりします。


思い起こせば「追憶」に感動してより早8年近く。まさかここまで飛空士シリーズが広がり、楽しませてもらえるとは思っておりませんでした。広がりすぎて世界設定が怪しくなってた感も否めませんが、それでも、かなりの部分を綺麗にたたんでくれましたね。犬村小六さん、お疲れ様でした。


これ、アニメ化しないかなあ、なんて思ってみたりもするのですが、前作見ないとわかりにくい上に、「追憶」と「恋歌」のアニメの評判を見ると厳しいか……。長さ的にはどう見ても2クール以上は必要でしょうしね。ミオとクレアの友情をアニメで見たいところではありますが。