ソードアート・オンラインⅡ 第22話「旅路の果て」

エイズかあ……。「後天性免疫不全症候群」という倉橋医師の言葉がすぐには頭に入らず「はて?」と思ってしまうところでした。もちろん知識としては知っていましたが、急に言われるとピンと来ないものです。明日奈にも衝撃的だったことでしょう。


ユウキやスリーピングナイツのメンバーが、何らかの病気かケガにより寝たきりの状態なのではないかというのは、ギルド名からも推察はしていました。しかしながら、それは事故とか、原因不明瞭な病気とか、ある種適当な設定にもできたはず。ここで、あえてエイズという現実的な病気を持ってきたところに、作者の意思を感じましたね。生半可な扱いではライトノベルでは書きにくい題材でしょうが、今回の短い間の取り扱いだけでも、ある程度ちゃんと調べているのは伝わってきました。いや、僕の方こそ素人なので、偉そうに言えた話ではないのですが。


倉橋医師も淡々と、それでいて良識を感じさせる話しぶりで、ユウキの病状や、エイズについての解説をしていきました。出てきた時に「すわ、今作でこの手のメガネは悪役か」などと思ってしまった、自分が恥ずかしい(……しかしながら、過去の事例から考えれば適切な予測ではありましょう)。ゲームのための技術と思われていたものが、医療としても期待される。倉橋医師の話も興味深いものでした。痛みが取れるのなら、それは使いたいよなあ。このへんは良いSFです。また、OPでユウキと並んで走っていたのは、今は亡き双子の姉であることも明らかになりました。この「マザーズ・ロザリオ編」のOPは、かなりの傑作であると思うのですが、その意味が一層重くなりましたね……。


ALOの世界ではあれだけ元気にはしゃぎまわっていたユウキが、現実では細く弱った体で横たわっている。この落差が、現実と仮想を行き来する今作を象徴している、というのも変な言い方でしょうか。ユウキが明日奈を評した、


「すごい、向こう側とほんとにそっくりなんだね」


という言葉も、対比的に響きます。予想していた以上に悲しく、切ないエピソードでした。


それにしても、ユウキと打ち合っただけで彼女の境遇を見抜き、その居場所まで察したキリト君が優秀すぎて怖い。今思うと、SAOで彼が頭角を現したのは、偶然ではなく必然だったのでしょうねえ。