「カーリー 」

「我々は8年待ったのだ!」


と言いたくなる、待望のシリーズ続刊(まあ、僕が待ったのは7年ですが)。連載再開の報を聞いてから、単行本発売まで、首を長くして待ち続けましたよ。


インド・パンダリーコットでの懐かしい学舎生活から4年。シャーロットはいまや名門・オックスフォード大学で法学を学ぶ19歳。しかし、インドへの愛情と別れた義弟・カーリーことアムリーシュへの思いは薄れるどころか、強まるばかりなのでした。戦後の混乱期でなかなかインドへの渡航もままならない当時、シャーロットがとったのは、インドの王子との偽装婚約という、思い切った(思い切り過ぎな)手段。果たして彼女が再び降り立ったインドの地で、どんな出会いが待っているのか?


と、いう感じで始まる3巻。まず驚きなのは、シャーロットがオックスフォードで大学生をやっていることです。受験勉強頑張ったとのことですが、そんなに頭が良かったんですねえ。もっとも、父親はインドの高官。やはり血筋的にも優秀ということでしょうか。途中で、アンベードカル博士の登場にもちょっとニヤリ。以前読んだ「ブッダとそのダンマ」は印象的でした。


アンベードカル博士のような実在した人物が出てくることからも分かるように、今巻は1・2巻と比べて史実性が増しています。有名なガンジーにも言及されますし、大戦後のインドの風雲や策謀がひしひし。その分、1・2巻のようなほのぼの学園少女小説の趣は薄れているのは、正直ちょっと残念。シャーロットとともに、物語も大人向けになったと言えましょうか。……大人向けといえば、ファミ通文庫から講談社文庫に移ったことで、挿絵が無くなってしまったのは大変遺憾であります。19歳のシャーロットやカーリー見たかった……。


また、全体的にも、あくまでクライマックスへ向けての準備の巻という印象であり、単体で見るといささか弱い感も。カーリーの出番も遅くて少ないですしねえ。これはとにかく次巻を楽しみにするしか。



さて、最後はネタバレでいきます。


サブタイトルは「孵化する恋」。でもシャーロットとカーリーは異父姉弟だし恋はどうかな、と思っていたら、なんと、2人は血が繋がっていなかったという父の証言が? ええ、たしかにそれだと恋人にはなれるでしょうが、血筋のロマンというのが失われてしまうのでどんなもんかなあ……。