「国際貢献のウソ」
- 作者: 伊勢崎賢治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/08/06
- メディア: 新書
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なかなか面白い一冊でした。
「国際NGO」というと、世界の貧困地域のために働く、正義感のある人たち的なイメージがありますが、著者はそうした「清貧」「無償」イメージがむしろ日本のNGOの発展を妨げていると指摘します。欧米の大きな団体はちゃんとした「仕事」であり、十分な給与の出る職業として成立していると。もっとも、寄付文化の薄い日本では欧米NGOのような収益を成り立たせるのが困難であるとも、半ば諦めを込めて語ってもいます。
国際NGOに課題があるのは何も日本に限ったことではなく、国連とNGOの微妙な関係についても書かれています。国連は巨大な官僚組織であり、紛争等の問題が起こっている現地で迅速に動くことは不可能。よって、NGOに現場の仕事を委託することになるのですが、そこで、両者の関係性が問題になってくるわけです。国連はどこまでNGOを守る責任があるのか。あるいは、NGOは国連の命令を聞いて、活動が中途半端であっても撤退すべきなのか。実際にはグレーゾーンの中で仕事が進んでいるようです。大変なことで。
あと、日本の自衛隊は問題がおおむね片付いたあとに遅れてやってくるという話もありました。隊員の質自体は高いので現地の人からの評判は良いそうですが、スピーディな貢献ではなく、単なる派遣の実績作りになってしまっているのではないかという著者の指摘は印象に残りましたね。
僕は知らなかったのですが、著者は結構すごい人で、30年以上にわたって国際NGOで活動してきた方。これまでアフガニスタンやシエラレオネ等で武装解除の指揮もしてきたということです。それだけに、単なる評論で終わらない説得力を感じました。普段あまり知らない世界だけに興味深い。アマゾンレビューによると同著者の「武装解除」の方が面白いみたいなので、読んでみようかな。