「高度成長昭和が燃えたもう一つの戦争」

奇跡とすら言われた戦後日本の高度経済成長とは一体何だったのか。様々な観点、人物から高度成長時代の歩みを追った一冊です。高度成長について書いた本は他にも多くあるでしょうが、本書の特色は、1931年から1945年までを「軍事の14年間」と、1960年から1973年までの「経済の14年間」と位置づけ、前者の失敗を反省し、後者の成功につなげたという対比の仕方をしていることです。


高度成長期のリーダー世代は戦時中に若者であった世代であり、勝算のない戦いに突き進んでしまった当時の日本の指導者や風潮に対する批判的な視点を持っていたということ。と同時に、軍隊では実際的、理性的なマネジメント術を身につけており、それを高度成長時に生かしていったという視点は興味深かったです。そしてまた、目標に向かって一心不乱に突き進むというのは、どちらにしても共通した日本人の性質であるとも。


僕は高度成長が終わったあとの世代ですから、年々国全体が豊かになっていく感覚というのはピンとこなかったりもしますが、先人たちの努力に感謝というのがまずひとつ。そして、将来から振り返った時に現在は一体どういう時代ということになるのだろうかということ。次に日本人が突き進むのは何に対してなのだろうかということを考えさせられるのでした。先の戦争のように、変な方向に熱中しなければよいのですけどね。