「棺姫のチャイカ 1」

アニメは1話で切ってしまったのですが、作者の榊一郎さんは「スクラップド・プリンセス」が面白かったので信頼感はあり、原作はどんなものかと手を出してみました。


ふむふむ、まずヒロインのチャイカは、かつてその圧倒的な魔力で世界に君臨し、「魔王」とまで呼ばれたガズ帝国皇帝の娘であると。なるほど、単に流浪の姫さまなだけではなく、世界的に追われる身なわけですか。そして持ち歩いている棺も、その父王の遺体を集めて供養するためのもののようです。……もっとも、チャイカの意思はともかく、本当に集まったら供養だけで終わるのか、そこのところは疑わしいものですけどね。話を読むかぎり、遺体を集めたら復活しそうなくらいのおどろおどろしさはあります>ガズ皇帝。しかし、そんな皇帝の娘だというのなら、チャイカには秘めた力みたいなのもありそうです。


そして主人公であるトールと妹のアキラ。彼らは「乱破師(サバター)」であって、アサシンというか忍者というか、戦場の特殊工作員的な能力者であると。ふむ。実は、アニメで彼らがチャイカの依頼にあっさりと従って領主の館に忍びこむという不法行為に手を染めていたのが引っかかったのですが、もともと裏の世界に近い人々であったということですか。アニメでも「サバター」とか言われてたと思いますが、カタカナで発音だけされても分かりにくいですよね……。


チャイカを守り、旅をすることを決めた兄妹。たとえそれが世界を再び戦乱に巻き込むものになろうとも……。つまり、どちらかというと「反正義」の立場の物語であると。それが分かると、ずいぶんと印象が違ってきます。そうは言っても、トールの行動原理はずいぶんと身勝手に感じられますが。あと、作者もあとがきで書いているように、これってほとんど「スクラップド・プリンセス」と同じ構図ですよねえ。まあ、今後どう違った魅力を出してくれるのか、追ってみようとは思います。


それにしても、本作に限ったことではないですが、軽々しく暴力を身内にふるうヒロイン(アキラのことね)というのはちょっと抵抗ありますねえ。軽くひっぱたく程度ならともかく、当たれば死ぬような鉄槌を本気で振り落とすなんてのは、ギャグとしても厳しいなあ。というか、アキラのトール兄様に対する感情が理解できません。これも伏線だったらすごいものですが。