「とある飛空士への誓約 1〜5」

とある飛空士への誓約 (1) (ガガガ文庫)

とある飛空士への誓約 (1) (ガガガ文庫)

とある飛空士への誓約 (2) (ガガガ文庫)
とある飛空士への誓約 (3) (ガガガ文庫)
とある飛空士への誓約 (4) (ガガガ文庫)
とある飛空士への誓約 (5) (ガガガ文庫)


飛空士シリーズの最新作。さてさて今回はどんなものかと読み始めたのですが、


なにこれ、むちゃくちゃ面白いんですけど。


7人の少年少女が織りなす壮大な群像劇。友情あり、恋愛あり、戦闘あり、そして悲しい裏切りありと、巻を措く能わずの面白さです。もちろん、飛空士シリーズ独特の世界観もまた魅力的。「恋歌」で謎の敵として出てきた「空の一族」ことウラノスの実像が次第に明かされていくのが興味深いところ。今作でも彼らは悪役模様ですが、彼らは彼らなりに社会があり、日常生活もある人間たちであるということもわかってきます。


5巻なんて一日で2回繰り返して読んじゃいましたよ。先日読んだ「夜想曲」も確かに面白かったのですが、今作はかなり上をいっていると見ます(まあ、量の違い分ということもありますが)。ラノベでここまで純粋に面白いと感じたのは久々。ああ、次が待ちきれないなあ……。


以下ネタバレ全開で感想です。


7人それぞれに印象的なキャラ。まずは清顕。性格は真っ直ぐであり、操縦の腕もエース級。ぽややんとしているようで鋭いところも持っているという正統派主人公。それでも、嫌味を感じさせず、応援したくなります。ミオを心底大切に思いながらも、イリアに惹かれるというのも分かりますねえ。あの展開だと。


イリア。当初は感情の薄い冷徹キャラなのかと思いましたが、その内には柔らかく優しい気持ちを持った少女でした。清顕とは、父親同士の因縁を乗り越えて友情を深める姿が心温まりますが、不吉な予知夢(?)とか伏線とかを振りまいているので、不安も募ります。果たして清顕と結ばれることはあるのか? ミオの存在もあるので、読者としてもやきもきしますね。


かぐらさん。7人の中では一番常識人で普通の人(剣以外は)。日常でも戦闘でも、常に冷静かつ穏やかな行動と言葉で7人を支えてくれます。1巻の副長提言での多数決、4巻での小隊長としての清顕とイリアの抑え方が印象に残ります。


バルタザール。「優秀だけど冷たくて危うい人」という第一印象が、しだいに崩されていく過程が見ていて楽しい。普通にやな人と言われつつも、頼れる仲間です。特に、エリアドールでの機長ぶりは学生とは思えない冷静さを持ったものでした。彼がその後も”機長”と呼ばれるのも納得というもの。それにしても、彼の雄大な野望の先には何が待つのでしょうが。


セシル。一癖も二癖もあるメンバーの仲で、最初から明るくて素直な彼女の存在にはほっとさせられました。それでもバルタザールについては色々愚痴ってましたけどね。そこがまた人間味があって良いと。最初は彼女が工作員でミオが王位継承者かと思っていたのですが、完全に作者の術中でした。はい。できればセシルにはそのまま普通の人として生きる選択をしてもらいたかった気もしますが、メタ的に言えば、伏線として出した以上、使わないとならないですかねえ。


ライナ。今のところ7人の中では一番の悪役ってことになるんでしょうが、良く考えるとライナ自身は母国の指令に沿った行動をしているだけで、別に悪いことはしてないのかもしれない。というよりむしろ、出来うるかぎり「7人」の友情に応えようとしているように見えます。まあ、どこまでが本心なのか分かりにくい人ですけどねえ……。


そしてミオです。今作における悲劇のヒロイン。明るく聡明で活発だった彼女が、裏切りの業を背負わされてどんどん暗く、孤独になっていくのが悲しいこと悲しいこと。あえて憎まれようと嘘をついて清顕の元を去っていくのが切なすぎでしたねえ。それだけに、プレアデスでのニナやイグナシオとの交流が心温まり、救われるシーンです。死にたいほどの罪を抱えても、時が流れれば笑うこともできる。それも人間。決して悪いことでもないとも思うのです。なお、そこまで読んで「恋歌」アニメの最終回で挟まれたカットの意味がようやくわかりました。イグナシオの隣で後ろ姿だけですが登場していたミオ。スタッフの方GJです。


で、メインの7人ではないですけど、ニナ・ヴィエント。「恋歌」を読んだものとしては気になっていた彼女のその後の姿。寂しそうですが、それなりには元気にやっていたのは良かった。アリーメンまで会得していました。それにしても、まさか王位継承候補にまで祭り上げられていたとは。単に神話にあるからという象徴的な意味で連れて来られただけではなかったんですね……。


とにもかくにも、今後が気になって仕方ありません。完結したら、どこか良いところがアニメ化してくれないかなあ、と夢想したりもします。「恋歌」はアニメとしての出来は正直いまいちだったので、もうちょっと作画とか演出とか良いところに。もっとも、もう自分の頭の中で勝手にアニメ化して動かしちゃってますけど(やり過ぎると頭が疲れます……)。