たまこラブストーリー

※ネタバレありです。


TV版・たまこまーけっとの評価が微妙だっただけに、当初はあまり興味のなかった劇場版。しかし、割と評判が良さそうだったので、ゴールデンウィークで時間があるということもあり、見てきました。これが思った以上にストレートな、タイトルに偽りのないラブストーリー。最近のアニメはヒロインがあんまり恋愛しない傾向にありますから、逆に新鮮であり、驚いてしまうほどでした。


思えば、TV版の欠点は、デラやチョイと言った南の島の面々や商店街の人々が目立ちすぎて、肝心のたまこが良く分からないキャラになってしまったところにあったと思います。ストーリーもなにをしたかったのかよく分かりませんでしたし。しかし、今作ではたまこともち蔵にきっちり焦点があたって、2人のキャラが深まってました。だからこそ、友人、家族といった周辺の人物も生きてきてましたよ。


印象的だったのは、もち蔵に告白されたたまこが、しどろもどろになって自宅に逃げ帰るシーン。周りの風景も声も届かずに、ただ困惑(と「喜び」も本人が気づかないレベルであったのでしょうけど)に光がぐるぐるしているのが彼女の心情をうまく表していました。これまでが基本マイペースなキャラだっただけに、この動揺の大きさが逆に、彼女の人間らしさを浮き彫りにしてくれたように感じられました。


そこからいくつかの出来事が過ぎて、再びもち蔵と向かい合うまで。この部分でかなり時間を割いてましたね。正直ちょっとじれるほどでしたが、友人や家族と語り、自分の気持ちに気づくまでの流れが、じっくり丁寧に描かれていました。そしてラストはさわやかに、感動的に。糸電話の糸があの距離ではたれてしまうだろうという疑問もありますが、まあ良いでしょう。2人の未来に幸あらんことを。


たまこ以外のキャラでは、まず、もう一人の主人公と言えるもち蔵。TV版では不遇な扱いでしたが、そこで溜め込んだ分のウップンを晴らすかのように頑張りました。よくやった。カッコ良かったですね。


そして、みどり。TV版でほのめかされていた、たまこへの想い。TV版では投げっぱなしだったので何だったのかと思わされましたが、今作できちんと意味を持ってきました。抑制的な描写でしたが、あくまでたまこのことを思い、ライバルのための策を立てて、身を引く彼女もまたカッコ良かったです。かんなの言う通り、良い顔してました。主人公がたまこともち蔵の2人なら、みどりは裏の重要人物ですね。それにしても、切ない話だなあ……。


全体的に、TV版での不満を解消、というよりも、TV版とはそもそも種類の異なる作品に仕上がっていたなあと。最初からこの路線でも良かったんじゃないか、と思えるくらいでしたが、それはそれとして。良い映画でした。TV版では中途半端だった「たまこの物語」が、これできっちりと仕上がったと、そんなふうに思います。