魔法少女まどか☆マギカ 劇場版[新編]叛逆の物語

鑑賞してきました。いや、なかなかすごい映画でしたね。


実は今作の出来については結構危惧しておりました。まどかのお話はTVシリーズでしっかり完結している。あれ以上一体何を付け加えるのかと。なので、公開週に足を運ぶのもちょっとためらっていたのですが、さすがにネタバレを避けるのもきつくなってきたので、いずれにしても観ておかねばなるまいと決意。……で、すっかりシャッポを脱ぎました。やはり力のあるスタッフは力のある作品を生み出せるものなのですね。ちょっと賛否両論的な評価も聞いていましたが、それも納得です。


で、以下ネタバレ感想。


事前情報はほぼシャットアウトしていたので、まずはどんな世界で始めるのかと気になっていましたが、魔法少女5人組が協力してナイトメアと戦いつつ、それなりに平穏な日常を送っているという序盤の描写。なんといってもここは楽しかったですねえ。まどかがいて、ほむらがいて、さやかもマミも杏子もいて、「ピュエラ・マギ・ホーリークインテット」(絶対マミの命名だなあ……)と声とポーズを揃えるなんて、それだけで嬉しくなってしまいます。あ、あとベベことお菓子の魔女がマミの相棒・友人になっているというのも意外性があるキャストでした。個人的にはもうこの部分だけで入場料の元はとれたという思いです。


無論、TVシリーズから見て来た視聴者にとっては、これはありえない世界であることは明白であり、さらに言えばほむらが自ら生み出して忘れているのであろうところまでは予想できたわけですが、徐々に世界の真実に迫り、たとえそれが偽りであっても、平和な日々を壊してしまうことになるほむらの挑戦は痛々しいものでしたね。


それでも、まどかやさやか達の「円環の理」の力によりほむらが魔女の呪いから解き放たれたところで終われば、それは切なくも十分に感動的な映画で終わったのでしょう。しかし、そう簡単にはいかないのがまどかです。正直言うと、一回見ただけではほむらの真意と行動をつかみきれていないのですが、彼女は「神様になんかなりたくない」というまどかの本心(少なくとも本心の一部)を聞いたことで、「人間としてのまどかを取り戻す」という一点に己の行動のすべてをかけたのですね。


ここでちょっと話はそれますが、この映画をみて思ったことは、概念としてのまどかと、人間としてのまどかは、ベースは同じでも少し違うのかなと。ほむらが力尽きようとした時に迎えに来たまどかは、もう長い時間を神様として過ごしたことで(神様に時間の概念があるのかは分かりませんが)、ちょっと神々しいような雰囲気でしたし、あのまどかはもうほむらにとっては別人だったのかもしれません。分かりやすいところでは眼の色も違いますし。


そして、魔女を超えた自称「悪魔」となったほむらは、宇宙の理をも書き換えて、まどかと暮らせる世界を構築する……。よもやここまで実行してしまうとは。でも考えて見れば、最初からほむらのまどかに対する愛情は異常なほどに強いものがありましたし、自分でも壊れかけてるようなことを言ってましたから、ある意味素質があったのでしょうね。神様と悪魔が友人として教室にいる世界かあ。何やらデビルマン原作のラストを連想してしまいましたよ。


これから平穏な日常をあの世界の中で送るのだとすれば、ほむらのやったことが、彼女が言うほど悪魔的なことなのかはなんとも言えない気がしますが、やはり重苦しい結末ではありましたね。ほむらは自分の「愛」を優先して、まどかの一世一代の勇気を否定したとも取れるわけですし。ただ、自分もTV版でのまどかの終わり方は寂しすぎると感じていた面もありますので、ほむらのやったことも分からないでもないといいますか。いずれにせよ、よくもまあこんな思い切った作りにしたものです。感嘆しました。


ただ、面白かったのは面白かったとして、自分としてはやっぱり、これを「正史」としては受け入れ難い気もします。まあこのへんは監督のインタビューでも「TV版はあれで完結していて、新編は劇場版の続編」的な解釈でされているそうなので、僕としても別物として捉えさせてもらおうかなと(もっとも、劇場版と言ってもTV版の総集編なのでどこが違うのやらという気もしますが)。「すごく出来の良いバッドエンド風味二次創作」的な感覚ですね。


ここまでは物語について語ってきましたが、シャフトの力の入った作画も今作の大きな見どころでした。5人の魔法少女の変身シーンも一般的なものとは一味も二味も違う作りでしたね。まあ、単純にカッコ良いとか可愛らしいとか言うのとは違う、変な感じではありましたけど。そういう狙いなんでありましょう。


あと、梶浦由記さんの音楽も鉄板なのですが、どうもサントラが今になって発売されるようで。だったら最初から、と思う人は僕だけではないでしょう。


さて、それにしても「これから」はどうなるのでしょうかね。個人的にはこれで完結でも良いんじゃないかと思うのですが、パンフレットを読むかぎり、どうも新房監督は続けたがっていて、虚淵さんは終わりにしたいようです。ここは変にもめてほしくないところ。一般論にはなりますが、脚本家がモチベーション薄い状態では続けないほうが良いんじゃないでしょうかね。


なんだかんだでまとまらないままに色々書いてしまいました。とにかく、語りたくなる映画であることは間違いないですね。これはもう一度見にいくことも検討せねばです。