「ベートーヴェン」
- 作者: メイナードソロモン,Maynard Solomon,徳丸吉彦,勝村仁子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1992/12/07
- メディア: 単行本
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- 作者: メイナードソロモン,Maynard Solomon,徳丸吉彦,勝村仁子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/02/25
- メディア: 単行本
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最近ベートーヴェンの交響曲にあらためてハマリ気味なのですが、「そういえばまともな伝記を読んだことがないなあ」と思い、本書をチョイス。本国での初版は1977年と、今から30年以上前の年代物ですが、それから15年以上経った1993年に日本語訳され、なお定評がある一品らしいです。丁寧な資料分析に加え、精神分析的な理解を取り込んでいるのが特徴。もっとも、精神分析のほうはどこまで正しいのか分かりかねますが。
貧しい音楽家の家に生まれ、ウィーンでピアニストとして才能を発揮し、やがて耳の障害に悩まされながらも大作曲家となるという略歴は知ってましたが、それでも細かいところは色々面白いエピソードがありました。たとえば、「名字にvanがつくことから貴族と勘違いされた」まではWikipediaにも載っていましたが、「彼がその誤解を積極的に訂正しようとはしなかった」ことは初めて知りました。著者はその理由を、ベートーヴェンの内心の英雄願望や、実の家族との距離感に求めています。
家族と言えば、ベートーヴェンが晩年に悩まされた甥・カールの養育権問題もありました。これは正直、なぜベートーヴェンがカールの母親と争ってまで強硬に養育権を主張したのか、読んでもいまいち分からないところがあります。一生結婚しなかったベートーヴェンの家族願望によるとかなんとか分析はつけられてますが……ふむ、やっぱり良く分かりません。ただ、この頃のベートーヴェンは少々精神的に弱っていたのだろうなあ、という印象は受けるところです。
間違いなく変人だったベートーヴェンですが、それでも不思議な魅力があったようで、友人は絶えませんでした。自分の天分である音楽に一生をかけ、生前から大作曲家として尊敬されてもいました。家族関係や病気のことを考えると苦労が多かったことでしょうが、それでも幸せなところは結構あったのではないか。いや、そうであってほしいな、と思いましたね。
ところで、本書にはベートーヴェンとモーツァルトの出会いについては書かれていません。Wikipediaや伝記なんかでも、「1日だけ出会って才能を認められた」みたいなことが言われてますが、「会ったという確実な証拠は無い」という話も聞きますし、どうなんでしょうか。出会っていたほうがドラマチックなのは間違いないですが、資料重視の本書では取り上げなかったんでしょうね。