「アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々」

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

20世紀後半。念願の独立を果たしながらも、なかなか経済発展することができず、苦しむ国の多いアフリカ。それはなぜなのか。「先進国に収奪されているから」という説明がされることもありますが(多分、それも嘘ではないのでしょうが)、著者はそもそもアフリカの政府自身の責任が大きい、と指摘します。


利権に走り、独裁を続け、批判をそらすために外敵を作り上げて攻撃する政治家達。争いと犯罪はやまず、働き手も、教育を受けた若い人材も絶望して逃げ出してしまうような「失敗国家」。ジンバブエをはじめとする事例を読むと、「政府というのはここまで無責任に、ひどくなれるのか」とあきれてしまうほどです。確かにこれでは、うまくいくはずがありません。


果たして今後アフリカが伸びていくにはどうすれば良いのか。最後に紹介されるNPOの活躍には勇気付けられます。キーワードは自立心でしょうか。日本もアフリカに対してかなりの援助をしていますが、「ただ与えるだけの援助ではダメ」というのはもっともです。立ち上がろうと努力している人たちが本当に求める時に、必要にして過大でないだけの援助を直接に届けられれば。難しいことなのかもしれませんが、著者のような見識十分の人のアドバイスを生かせれば良いと思いますね。そして一方、まかり間違っても日本がこのような状態に陥らないように、国民も努力せねばならないなと思いました。


著者は長年朝日新聞の記者を務めた方とのこと。朝日のベテラン記者の地力を感じさせる良書でした。