「不安の正体!」

不安の正体!

不安の正体!

論客四氏による、イラク戦争とその周辺をとらえた対談本。アメリカと日本の情勢を中心に色々と語られています。多少の意見や得意分野の違いはありますが、基本的に皆さん「反ブッシュ政権反小泉政権、反アメリ単独主義」といったところで一致しているので、流れはスムーズ。社会をどう築くかという根本理念の問題、そしてアメリカの抱える政治経済面の問題。読んでいて勉強になりました。
タイトルにもなっている「不安」というのは、等質化された近代社会で人々が本能的に感じてしまう感情との指摘。それがメディアにより煽られることでさまざまな問題が発生してしまうという視点が印象的でした。この本でも触れられていますが、マイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」でも、アメリカのメディアは凶悪事件などばかりを大きく扱って人々の不安意識を煽り立てているという一節がありましたっけ。そして不安が大きくなると心に余裕が無くなってしまい、他者に対して排斥的になったり、あるいは自ら監視カメラを希望するようになったりすると。現在一部で気になるオタクバッシングもその類型と考えると分かりやすい気もします。実際、明るい気持ちのためには日々のニュースの半分くらいほのぼのした良い話で埋めても良いと思うんですけどねえ。
論調に賛同する・しないはありましょうが、個人的には割と納得しながら読めました。まあ納得したからといって解決するような話ではないのが大変なんですけどね。本書中で4人が熱望していた(苦笑)ブッシュ氏の落選はなりませんでしたし、そのうち続編が出るかもしれないなあ、などと思ったりします。



書きつつふと思ったんですが、「メディアによる悪影響」という考え方は「ゲームやアニメの悪影響がうんぬん」と言うのとあまり変わらないですかね。後者だけを否定するとちょっと矛盾かもなあ……。