劇場版AIR感想

公開より一週間、ようやく見ることが出来ました。さすがに初日よりはずっと空いていましたが、それでもなかなかの客入り。やはり上映館数が少ないのでないかと思いますが……。まあそんなことはともかく、感想です。まずは一言、


「素晴らしい」


賛否両論気味な評価はちらほら聞こえてましたが、私的にはかなりヒットでした。なるほど原作からは相当に離れていますが、原作の再現でしたら好評のTV版もあるわけです。むしろ同じことをやっては劇場版の意義が無いのではないかと心配だったのですが……杞憂でした。「アナザーなAIR」と言いますか、他メディアとは一味違う町並みやキャラクターの性格、そして再構成された物語が面白かったです。
特に良かったのが観鈴の描きかた。原作のボケボケしたキャラクターはどこへやら。ちょっと変なところは残しつつも、実に普通の女の子らしくなってます。これが妙に魅力的でした。「AIRは好きだけどキャラの幼いのがなあ……」とお思いの向きにはぴったりのアレンジと言えましょう。またこのために、物語全体のシリアス度と恋愛度がアップしているのも新鮮でした。
シナリオ以外の面についてですが、音楽は原作のアレンジがちらほら、他の曲はさほど印象には残りませんでした。まあ一回だけの鑑賞ではなかなか音楽って覚えられませんけどね。歌はもちろん「鳥の詩」から始まり「青空」「Farewell song」等が登場。もっとも、作品の雰囲気が原作と異なるので、少々違和感も感じてしまいました。作画は背景が美麗だったと思います。波とか夕焼け空とかには映画館ならではの雄大さがありました。一方でキャラクター部分はもうちょっと頑張って欲しかった気はしましたね。おおむね問題はなかったですが、一部怪しかったです。
総合的には満足な出来映えでした。号泣するという感じではないですが(そうするには溜めの時間が足りないなあ……)、一つの空気は伝わってきたと思います。原作との違いを許容できる方なら十分に楽しめるのではないでしょうか。むしろまったくAIR初見の方がご覧になっても良いかもしれません。


以下ネタバレで。




シナリオの話に戻るんですが、原作と違って往人が最後まで残るために観鈴の思いの対象が往人と晴子の二人に分散してしまうんですよね。そこはちょっと扱いの難しいところだったかなと。あと往人が観鈴に対して出来たことが分かりにくかったように思います。原作では往人の力によって――たとえ最後は助からないにしろ――観鈴には晴子と交流する時間が与えられたわけですが、劇場版だと往人の母親言うところの「救う力」が発動しなかったようにも見える。もちろん、観鈴に笑顔を与えられたのは間違いないのですけどね。その辺含めた全体のテーマが不明確な感は残りました。