結城友奈は勇者である -結城友奈の章- 一気感想

Dlifeで始まった再放送が自動録画されていたのを機に視聴です。そもそもこれまで、Dlifeなるチャンネルが有ることすら知らなかったですが、作品自体は知っておりました。「ゆゆゆ」こと「結城友奈は勇者である」。リアルタイム放送時には多分まるっきりスルーしてたと思います。多分、「勇者である」というタイトルにコミカルなものをイメージしてしまったんでしょう。実際は全然そんなことなかったわけですが。ええと、2014年10月ということはSHIROBAKOと同じ時期ですか。SHIROBAKOってもうそんなに前なのか、と軽くショックを受けます。


1話を見て、おお、これは良作な感じだ、とばかりに毎週待っている気になれず、取り出しましたるはAmazonプライムビデオ。本格的に使用したのは初めてですが、これまでは「PCとかスマホとかじゃないと見るの大変なんでしょ?」という先入観がありました。しかし、PS4のアプリを使用すればTVでも簡単に見られる。しかも、比較の結果Dlifeよりも明らかに画質が良いということで、すっかり感心でしたよ。やるなAmazon。聞くところによるとNetflixはもっと画質が良いとも聞きますが、どうなんでしょうかね。いずれにしてもAmazonプライム会員のコスパの良さは圧倒的ですが。


で、お話です。「讃州中学校勇者部」の面々が世界の危機に本当に変身して戦うことになってしまったよ、というところから、しだいに世界の仕組みが明かされるシリアスな終盤まで。全12話にして中身が濃かったです。しかし、タイトルからはこんなに魔法少女的な話とは想像してなかったですよ。


まず勇者部という物々しい名前は何かと思ったら、実際にはボランティア活動的な部活であったということが冒頭で示されつつ、実はそれは隠れ蓑で本当に勇者となるための人材を集めていたんだよとくる。上手いですね。そして、「神樹様に拝」とか西暦とは違う暦とかで、はっきりとはしないまでも少し不穏な空気を出していくのが良いです。


順調にパワーアップして敵を倒していってというところで、体の不調が出てきたところから一気に不穏な空気に。「大赦」からは治ると知らされつつも、いかにも「これは治らないな」的雰囲気を醸し出していきます。こう言ってはなんですが、風みたいに片目だけならまだしも(とは言え、実際片目が見えなくなったら大変でしょうが)、友奈の味覚とか、樹の声とかは相当にきつい。特に味覚がなくなっては辛いでしょう。


そして明かされる世界の真実。壁の外は人類の敵であるバーテックスたちの領域であり、人類は神樹に「勇者」を捧げることにより生き延びていたのであったと。勇者たちは力を得る代わりに体の感覚を神樹に奪い取られ、いつまでも戦いに明け暮れるだけの日々が待っていると。


この重苦しさと絶望感と言ったら。風が大赦に殴り込みをかけようとしたのも理解できます。というか、むしろそのまま突っ込んでほしかったくらいで。しかし、さらに過激な美森の行動で物語はクライマックスへ急展開。それでも、勇者の活躍により世界の危機は救われ、皆、また笑って過ごせるのでした。めでたしめでたしと。


正直、このままバッドエンド、バッドまでは行かないにしろビターエンドに収まるのかと思っていただけに、最後に一気にハッピーエンドに持ってくる力技には驚きました。嬉しい反面、ご都合主義という言葉がでかけますが、よく考えるとこれは、神樹が美森の反抗に肝を冷やしたということなのではないか、ということで僕の中では納得しております。つまり「まずい、こいつらを怒らせると何をされるか分からん」と恐れた神樹が彼女たちのくびきを解いたのではないかと。身も蓋もない発想ですが、辻褄は合うはず。そう考えれば、いたずらに危機を招いただけに見える美森の軽はずみな行動も、ラストの幸福につながっていたんですなあ。


やっぱり勇者の物語にはハッピーエンドがよく似合うのです。勇者部五箇条! なるべく諦めない!


さて、そんなこんなで存分に楽しませていただきました。全体的な印象としては(散々言われているでしょうが)「ああ、これはまどか後の作品なんだなあ」というもの。まどかを意識というか、影響を受けているのは間違いないんでしょうね。ただ、その上で違いを上げるのならば、彼女たちの絆の強さでしょうか。まどかの場合、割と個々に分散しちゃってましたし。あ、あとキュゥべえがいない(笑)。精霊はいましたが、直接的な悪さはしてませんから。


あえてキュゥべえ的な存在を挙げるのならば大赦ということになるのでしょうが、ここについてはちょっと描写薄かったですね。一応海&温泉旅行をプレゼントしたり、夏凛の転入を認めたりと、最低限の善意はあるようですが、風の言うとおり、システムのことを伝えないで戦わせるのはひどい話と言わざるを得ず。ここは改革してもらわないとですな。


なお、大赦に限らず、大人の存在感の薄いアニメではありました。友奈の両親とか何やってるんだか全然わからない。もっとも、これは狙ってそうしているのでしょう。あくまで中学生女子たちの勇気こそが主題ということで。


原作がタカヒロさん。「アカメが斬る!」好きなんでそういう意味でも波長が合ったかもしれないです。


さて、主人公の話になりますが結城友奈ちゃん。さっき、両親が何をしているかわからないと書きましたが、このネーミングセンスはなかなかです。一見「ゆう」がかぶって下手なように見えますが、韻を踏んでいて呼びやすい。


結局物語を最後に締めたのは勇者の適正値が一番という、彼女の心の強さでした。最初から最後まで良い子でしたねえ、友奈。これが良い子すぎると逆に不自然で嫌味になってしまうものですが、そうならないラインを上手いこと押さえていたような気がしますよ。まあ、一度くらいは一人で落ち込むようなシーンがあっても良かったかなとは思いますが。「おめでとう、そしてありがとう、友奈」です。


さて、これで感想も書けたことですし、次の「鷲尾須美の章」もいってみましょう。幸いそちらもAmazonにあるようですし。それにしても、美森の足とか精霊の数とか記憶とか、上手い伏線だったなあ。うならされましたよ。